自分が歩んできたここまでの23年間で出会った数多くの人間の中から、抜群のリーダーシップを有している人間を1人選ぶとしたら、迷わず私は「西岡津世志」という人間を理想のリーダーとして紹介します。先に述べておきますと、彼には「2030年までに全世界195カ国すべての国に自ら夢を語る仲間を創出する!」という明確な夢があり、その気宇壮大な夢と彼の人間力に惹かれ、彼の下には実に多くの人が集まってきます。
津世志さんは、現在アメリカのマサチューセッツ州ボストンにある「夢を語れ Yume Wo Katare」という二郎系列のラーメン屋を経営している37歳のラーメン職人でありますが、彼のことをラーメン職人と称するのには違和感があります。実際に、彼は「私が作っているのはラーメンではない。私が作っているのは夢だ。」と折に触れて語っていました。
一見トンチンカンなことを言っているようにも聞こえる津世志さんがボストンで店を開いたのは2012年10月。アメリカ史上初の二郎系列ラーメン(二郎系列ラーメンとは普通のラーメンの2倍は軽く超える量の麺が入っている豚骨醤油ラーメンで、ラーメン二郎三田本店の味を模倣したスタイルである)がボストンにやってくるということと、「夢を語れ」というそのメッセージ性の強い店名から、開業前から地元ボストンの日本人コミュニティでは話題になっていました。
いざオープンすると、そこは一般的なラーメン屋とは一線を画す異様な空間で、ラーメンを食べ終えた後、客が一人ひとり席を立ち、皆に自分の夢を語ってから店を後にする、というなにやら前代未聞のことをやっていました。さておき、アメリカという地で二郎系ラーメンをガッツリ頂くことができる嬉しさに感動した私は、二郎系ラーメンを食しては
Hi, I am Hiroki Kobayashi, and my dream is to become a professional soccer player in Japan!
と見ず知らず、多種多様な店内の人たちに向かって誇らしげに語る、という不思議な毎週を送るようになっていました。そして、初めての訪店から1ヶ月後には大学に通いながら「夢を語れ」でバイトを始めるようになります。当初は、まかないとしてラーメンを食べることによって毎週費やしていたラーメン代を浮かすため、また極寒の中店舗の外で並ぶことを避けるため、と今思うと恥ずかしい動機でバイトを始めたものでしたが、この生半可な気持ちで始めたバイトで津世志さんと出会えたことが、結果的に私の大学生活において一番の財産となりました。
津世志さんは渡米直後英語を話せなかったうえに、アメリカに頼る仲間もいないという、徒手空拳で単身渡米してきたわけですが、今ではバイトメンバーを含めた有志は優に100をこえ、開業から4年経つ現在でも列が一向に途絶えることない人気ぶりを保ち続けています。津世志さんの店舗がなぜこれほどまでの成功を収めることができているのか。その理由を突き止めていくと、津世志さんのリーダーシップに帰結するのではと私は考えます。
津世志さんには、冒頭で述べた「2030年までに全世界195カ国すべての国に自ら夢を語る仲間を創出する!」という明確な夢があり、「夢を語れ」を経営しているのも、その夢を叶えるためのプロジェクトの一環であります。勝手ながら、もう少し噛み砕いてこの夢を説明させていただきますと、津世志さんの夢は、より多くの人が夢を持ち、その夢を仲間と語り合い、語り合うことによって同じ夢を持つ同志が、またサポーターとなる人たちがつながり、そしてその夢の実現に向けて協力し、結果的によりよい未来が創られていく、そんな世の中の実現に貢献していくことであります。「夢を語れ」はあくまでもそのような仲間が出会い、語り合い、化学反応を起こすためのプラットフォームであり、ラーメンは言わば夢を語る人を集めるための手段なのであります。もちろんそのラーメンが美味しすぎるから人がそもそも集まってくるわけで、自分もそれにつられてやってきた一人であります。
「夢を語れ」にやってくるのはラーメン好きだけではありません。西岡津世志という人間の魅力に惹かれ足を運ぶ人も多いです。元お笑い芸人という肩書きをもつ津世志さんは、常に明るく人を笑わすのが得意な人でもあります。営業中は、飲食業のプロフェッショナルとして徹底したサービスを提供する一方、営業が一度終わると夢を語るエンターテイナーに変わる、そんな津世志さんはいつも多くの人に囲まれています。
私が津世志さんを理想のリーダーだと考える理由は、彼には明確な夢・ビジョンがあり、その夢の大きさで人を引っ張っているところにあります。彼の下に集まる仲間は、雇われているという意識が一切なく、彼の掲げる夢に共感、圧倒された者が、それを実現するためのチームメイトに自発的になりたがり集まった組織です。Marcus Buckinghamは著書の“最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと”にて、リーダーが担うたったひとつの仕事は明確なビジョンを示すことである、と論じていました。また、リーダーはつねに楽観的である必要があり、それには先天的な楽観主義が必要である、とも論じていいました。津世志さんは、夢に生きる人間であり、またお笑い芸人を志したほど常に明るい人物で、Buckingham氏が定義するリーダー像に面白いほど当てはまっています。
また、岩田松尾さんはリーダーとは人としての徳が高い人が自然と周りから推されてなるものである、と主張していますが、「夢を語れ」はまさに津世志さんの人間力に惹かれて集まった人々によって成り立っている組織であります。津世志さんと一緒に働くことによって、彼から様々なことを学びたい、彼からポジティブなエネルギーをもらいたい、彼から夢に向かって突き進む後押しをもらいたい、そんな人が夢を語れでは働いています。
私は西岡津世志というリーダーに大学在学中に出会えたことを誇りに思います。一流のリーダーと共に働けたことで、今後自分がどのような人であったらついていきたいと思える、という自分のなかでの物差しができました。また、彼のようなリーダーになるために、彼の夢に負けないほど大きな夢を掲げ、人としての徳を磨いていきたい、とも思わせていただけました。西岡津世志さんには心から感謝しているし、今後ともお世話になりたいと勝手ながら思っています。
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