読書記録、略して”読録”第15号は Marcus Buckingham 著書の 最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと という本についてです。
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この本に自分でタイトルをつけるならズバリ: よきリーダーはよりよい未来を描かずにはいられない
読書に至ったキッカケ
読録7で岩田松雄さん著書の「『ついていきたい』と思われるリーダーになる51の考え方」を紹介しましたが、そのときに今自分が所属しているある組織で毎月読書研修をしていますよ、という話をしました。
読書研修というのは、要するに宿題で本を読み、研修にてその本で取り上げられたテーマについて、社内で討論する、という仕組みの会なのですが、最近は私が仕切って本選びから研修自体のデザインまで手がけています。
つまり、自分は研修のファシリテーターでありながら、その研修の始まりから終わりまでの流れを自分の思い描くままに実行できる、ということです。
社内研修というのは、社員全員で同じことに取り組む数少ない機会でありますし、企業の目指すべき方向の道しるべを示す機会にもなるということで、影響力があるのでやりがいを感じて取り組んでいます。
さて、先月の読書研修のテーマは「リーダーシップ」であったのですが、今月のテーマも引き続きリーダーシップにしました。
リーダーシップというのはすごく大きなテーマであるので、一ヶ月だけとは言わず、数ヶ月かけて深く掘り下げたいテーマであります。
そして、本選びをするにあたってリーダーシップの本について色々と調べた結果、読者からの評価がものすごく高かった本の1つがこの本でありました。
実際、読んでいて自分の考える理想のリーダーシップ像が覆されるほど衝撃的な1冊でした。
要約
自分はこの本が大好きだったのですが、内容がとても濃いうえに小さい文字で300ページ近くあったので、とても重かったです。
Buckinghamさんは、ギャラップ・オーガニゼイション(Gallup)という世論・企業調査をする企業で17年間勤務し、その17年間の間に世界を代表するリーダーをごまんとインタビューする機会に恵まれてきた方です。
表題にもある通り、この本はリーダーとマネジャーを明確に区別し、それぞれの役割、もとめられる素質をいくつか紹介しています。
そして、ありがたいのは、その役割や素質の一つひとつを、Gallup時代に彼が出くわしたWalgreens, WallmartやBest Buyなどの企業で働く優れたリーダーやマネジャーを例として取り上げながら、とてもリアルに説明してくれています。
そして、最終的にそれら素質の共通項を見出し、優れたリーダーが、優れたマネジャーが、そしてあなたが個人として成功するために持つべき「たったひとつのこと」を教えてくれます。
それでは、順を追って1つずつ説明していきます。
マネジャーとは
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- 優れたマネジャーの仕事:
部下一人ひとりの特色を発見し、それを有効に活用すること
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- そのために必要な「たったひとつのこと」:
部下一人ひとりに、組織の目標達成のために一番重要なことは自分自身の成功だと信じてもらうこと。
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- 優れたマネジャーに必要な才能:
部下一人ひとりの成長を心から楽しみ喜ぶ才能、教育本能(Coaching Instinct)
Buckinghamはマネジャーは触媒のようなものだと言っています。
組織において、マネジャーにしかできない貢献は組織に属する一人ひとりにより生産的に仕事をしてもらうことであり、そのためには一人ひとりが自分のポテンシャルをフルに活用して貢献しなければなりません。
部下の一人ひとりが自信を持って自分の長所を存分に活かし、それが結果的に組織の前身につながる。
それを実現するための人間掌握術、人の配置などの環境整備、個々の違いを感じ取る能力、そして教育本能がマネジャーには必要です。
Buckinghamさんは「優れたマネジャーはチェッカーではなくチェスをプレーする」と表現しています。
チェッカーとチェスの一番の違いは、チェッカーでは駒は全て同じ役割を持つが、チェスは駒がそれぞれ違う動きをすることです。
優れたマネジャーは優れたチェスプレーヤーのように、部下が持つ個性や強みを理解し、それを企業の目的のために役立て、逆に凡庸なマネジャーはマネジメントを型にはめる仕事だととらえ、部下を仕事や役割にfitするように逆に作り変えてしまいます。
リーダーとは
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- 優れたリーダーの仕事:
よりよい未来を明確に示し、人々を一致団結させること
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- そのために必要な「たったひとつのこと」:
部下達が持つ普遍的なこと(広範囲の共感)を発見して、それを活用すること
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- 優れたリーダーに必要な才能:
天性的な楽観主義と強い自我
マネジャーが組織を円滑になおかつ相互作用をフルに引き立てるための「触媒」とするのなら、リーダーは「起爆剤」のようなものだ、とBuckinghamさんは論じています。
有能なリーダーは情熱的である必要はない、魅力的である必要もない。才気あふれる人物、親しみやすい人物でなくてもいい。弁舌に長けてなくてもいい。ただ明確であればいいだけだ。他のことはともかく、決して忘れてならない真実は、人間のすべての普遍特性 – 安全への欲求、共同体への欲求、明確さへの欲求、権威への欲求、敬意への欲求 – の中でも、明確さへの欲求に応えてもらったときに、私たちのなかに自信と、ねばり強さと、活力と、創造性が生まれるということだ。
この一文がBuckinghamが考えるリーダー論を明確に示しているのではないでしょうか。
より多くの社員に普遍するひとつの使命を見つけ、その使命を果たしたときに見える未来を明確に示す。
そうすることによって、有能なリーダーの下で働く部下は、「だんだん彼の未来が自分たちの未来に思えてくる」と錯覚するようです。
また、示す未来は正確であるよりも明確であることが大事であると述べています。
人間が持つ未来や未知なるものへの不安や恐れを、リーダーは行動やことば、映像、写真、ヒーロー、数字などを利用し、未来をあざやかに見えるほど明確に示すことによって取り除くことができます。
誰のために働くのか、核となる強みは何なのんか、どの尺度で成功を測るのか、今日どのような行動をとればよいのか、それらを有能なリーダーは明確に示します。
そして、優れたリーダーが未来像を描くのは、楽観主義者でものごとが今よりうまくいく、ということを本能的に信じていて、それを描かずにしてはじっとしていられないからであるからだ、と述べています。
有能なリーダーは現状維持に強い不満を抱き、進化を望む、というよりも望まずしてはいられない、ということです。
そして、彼らはそれを実現させるのは自分しかいない、自分が鮮明に描く未来への舵取りは自分しかいない、と己の全存在をかけて信じている、そんな強い自己確信とも呼べる強い自我を持っている、とも述べています。
これはなにもリーダーが自己中心的である、という意味ではなく、彼らは信念や自信を自分より大きな事業への奉仕に注ぎこみます。
そして、さきほどのマネジャーに必要な才能と同じく、楽観的で強い自我を持つ能力は先天的なもので、例えば「無礼でない」
と「魅力的である」が違うことと同じように、いくら悲観主義者が「軽度な悲観主義者」に努力の末なれたとしても「うまれつき楽観主義者」にはなれない、と論じています。
成功し続ける個人
Gallupの調査によると、職場で毎日もっとも得意なことをする機会があると答える人は20パーセントしかいないようです。
この20パーセントの人々はキャリアが進むにつれて自ら選んだ分野で一流になり、結果より創造性豊かに、よりねばり強く、より手広く仕事を片付ける優れた個々に成長していきます。
そして、人生において継続的な成功、すなわち可能な限り大きな影響をもっとも長い期間与えることとBuckinghamさんが定義するもの、を果たします。
この、言って見れば人生の勝ち組、に普遍する「たったひとつのこと」それは、自分がしたくないことを見つけ出し、それをやめる能力だといいます。
継続的な成功は、自分が持っている強みを理解し、そしてそれを活かせる環境を理解し、さらには自分を弱体化させる弱みも理解し、そしてそれをできるだけ効率よく人生から排除することにかかっています。
そして、自分がしたくないことを見つけ出すためには、自分が退屈しているとき、満足していないとき、ストレスを感じているとき、そして消耗を感じているときを見極めることが必要だとしています。
所感
マネジャーの出発点は部下一人ひとり、そしてリーダーの出発点は自分が描くよりよい未来のイメージ、という指摘はとても面白かったです。
また、優れたマネジャー、リーダー、そして個人になるために必要なことは、バランスを求めず意図的にアンバランスを狙うことである。
マネジャーは部下の個性を拡大し強調し活用することで、リーダーは核となる強み、顧客層、尺度を選び、よりよい未来を明確にする一点に集中することで、そして個人は障害となるものをキャリアから排除しすることによって、あえてアンバランスでいることが有能である条件である。
という考え方は、とても新鮮であり勉強になりました。
そして、何より驚愕したのが、優れたリーダーやマネジャーになるには天性的な才能が必要であると論じている点です。
自分はアメリカにいた8年間、リーダーシップというものについて様々な人と議論をしてきましたし、多くのリーダーシップについての本も読んできました。
そんな自分の中でのリーダーシップ論を簡単にまとめると
- リーダーとはVisionを打ち出し、組織に属する個々のベクトルを同じ一点に向ける人
- 自分で考え、自発的に組織の目的達成にむけて行動できる人
- リーダーシップは誰でも発揮できる
というものでした。
このうちの1つめはBuckinghamさんが論じるリーダーシップ論と似ているところがありますね。
「Visionを打ち出し、個々のベクトルを同方向に向ける」というのはBuckinghamさんがいう「よりよい未来を明確に示し、一致団結する」こととほぼ同じイメージでした。
ただ、自分の考えと違ったのはBuckinghamさんはその「Vision」であったり「よりよい未来」というのは何も後付けで頭の中からひねり出して標榜するものではなく、真のリーダーには自然と出てくるし、そうせずにはいられないものだという点です。
つまり、自分の誰でもリーダーになれる、という発想を根本的にBuckinghamさんは否定しています。
これは挑戦的で面白い!!
例えば誰かが何かの拍子に組織の上に立つことになったとして、そこから慌てて組織の目指すべき目標を考察していたとしたら、その人はBuckinghamさんの定義によれば優れたリーダーではない、ということになります。
しかし、ここで面白いのは、別に有能なリーダーではなくとも、部下の上に立つ立場として優れたマネジャーになれる余地は残されている、という点。
優れたマネジャーになるのにもまた別の才能が必要である、と彼は言っていますが、経営者という立場に立ったとしても、良きリーダーであることと良きマネジャーであることは全く別の問題である、ということであり、この考え方はとても的を射ていて面白いです。
なお、この本はリーダー論マネジャー論のほかにも、個人として継続的に成功するための極意を教えてくれますが、「自分がしたくないことを見つけ出し、それをやめる」ことが結局は成功するために必要な「たったひとつのこと」であるというアイディアも、これまた納得させられるものでした。
自分の強みを活かす環境を見つける → 自分が苦手としていることを求められる環境から自分を遠ざける
という逆説的な、Aを証明するためにはNot Aでないことを証明する的な考え方ですが、これにはまずは自分の強みを自分で把握することが最初の一歩ですね。
ちなみに、強みを活かすというのは、前述した岩田松雄が紹介していたコリンズ氏が提唱する「針鼠の概念」に通じるところがありますね。
まあ、彼はどちらかというと「誰でもリーダーになれる」派ですし、リーダーのそもそもの定義も違いましたが、どちらも「得意なこと」を軸にするという点では賛同しています。
応用
今回に限っては、今回学んだことを応用するもなにも、優れたリーダーとかマネジャーになるには先天的な能力が必要だからね、とキッパリ言われているので、「んじゃこの本を読んでこれからこうするように心がけたいです」とするのは、ズレていると思います。
ただ、自分はこれまで常に叶えたい夢があって、それに向かってここまでまっすぐ生きてきた人間なので、今の夢はJリーガーになることですが、いざ自分の夢がBuckinghamさんが言う”自分より大きな事業への奉仕”と重なった時には、優れたリーダーになれると自負はしています。
優れた個人になるために必要な「自分がしたくないことを見つけ出し、それをやめる」をするためには、そもそもまず自分の強みはなにかを自分で把握しなければいけないのではないか、というのは先ほども述べました。
それで、今回の読書の応用として①自分で自分の強みが何か書き出して考える時間を作る、というのと②自分が信頼する人3人に自分の強みがなにであると思うか聞いてみる、を実践したいと思います。
それでは、長々と失礼いたしました。
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